ナイチンゲールは、多感で豊かな感受性を持ち、人を愛することへの願望が人一倍強いところ
がありました。多くの著名な友人を持つナイチンゲールでしたが、その内の何人かは彼女を熱烈
に愛し、結婚を申し込むという出来事もあったようです。ナイチンゲール自身、リチャード.
モンクトン・ミルズには心からの敬愛を感じていましたし、彼との結婚は、家族の誰からも祝福
される理想的なものだったはずです。
しかし、ナイチンゲールの心は彼との結婚に踏み切れずにいました。この頃の彼女は、病院で
働きたいという願いが否定されて、毎日が途方もなく退屈で、限りなく無意味に思えており、書
くことによって精神の喜びを感じていましたが、押し寄せる絶望感をどうすることもできず、自
己の将来に何の希望も見いだせずに苦しんでいました。こうした状態を抜けきるには、普通であ
れば愛する人と結ばれて、新しい生活を築くことだと考えるのですが、彼女はまったく反対の立
場をとつていました。
なぜなら、リチャードと結婚することは、彼を取り巻く新たな社交界に入っていくことであり、
それでは今の暮らしを延長させるだけにすぎないと思えたからです。それほどにナイチンゲール
は上流社会で暮らすことに価馗を見いだしていなかったのです。
「ただ死のみを願っている」と記していた絶望の時期に、ついにリチャードは待ちきれずに求婚
しました。そして彼女はこれを断ったのです。なんと七年にもおよぶ恋でした。ナイチンゲール、
29歳の時のできごとです。
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