かつて最初の第一歩を踏みだしたのは、18411年の夏のある曰からということになつています。
彼女は22歳になっていました。
夏にはリハースト荘で過ごすことになっていたナイチンゲールが、隣の村の農民小屋を訪ねた
ところから、彼女の思考はそこにくぎづけになってしまつたのです。この年は、英国の歴史上「飢え
た四十年代」に当たり、村や町はどこも飢餓と重労働と不潔と病気で溢れかえっていました。
ナイチンゲールは農民小屋を訪ねた後の私記に、次のように書き綴っています。「私の心は人び
との苦しみを想うと真っ暗になり、それが四六時中、前から後から、私に付き纏って離れない。
まったく片寄った見方かもしれないが、私にはもう他のことは何も考えられない。詩人たちが謳
い上げるこの世の栄光も、私にはすべて偽りとしか思えない。眼に映る人びとは皆、不安や貧困
や病気に触Iまれている」と。
こういう状況に対して、母ファニイは娘たちに銀貨やスープを持たせて富める者の貴任を果た
そうとしました。しかしナイチンゲールは、その施しが、病める者を救うとは決して思えなかつ
たのです。
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