2014年5月6日火曜日

天職に向けて

リハースト荘の近くの農民小屋に頻繁に出入りするようになって、ナイチンゲールの心は次第

にある一つのことに傾いていきました。それは、どのようにすれば貧窮者や病人に本当に明るく

人間的な暮らしを提供できるかという問題でした。彼女が目撃した光景は、この世のものとは思

えないほどに恐ろしく、人々の荒れ狂った生きざまは、彼女の心を捉えて離さなかったのです。




ナイチンゲールは、もはや単純な施しではこうした人々は救えない、それどころか、逆にお金

や物が彼らをさらに悪い方向に押しやってしまうと気づいたのです。彼女は両親に、小屋を建て

直して人々を教育する計画をつくるよう、また薬品、食料、寝具、衣類などを送るように懇願し

続けました。そして自分はこの地から離れたくないと申し入れたのでした。しかし、こうしたナ

イチンゲールの願いは、ことごとく打ち砕かれました。彼女にはロンドンで暮らす次の華やかな

スケジユールが待っていたからです。




現代の娘でしたら、自分の思うままに生きることを許されるのですが、当時のナイチンゲール

家のような家柄に生れた娘たちにとって、家を出ること、両親の意向に逆らって生きることは絶

対に許されないことだったのです。ナイチンゲールは、やむなく農民小屋を離れました。




しかし彼女はくる日もくる日も、自分の使命について考え続けていました。そしてついに1844年のあ

る曰、自分に与えられた天職は、病院に収容されている病人たちの中にこそあるとい

う結論に達したのです。そしてそれ以降は決してそのことについて迷うことはありませんでした。

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